■■■ HP管理人的 XBOX360 コラム ■■■

過去のコラムはこちらからご覧いただけます。

2007/08/13のコラム

厳しい猛暑とは全く関係なく、冷房の効いた部屋にて
TRPGについて
ちょっと語ってみようかと。


さて、4ヶ月ぶりぐらいのコラムとなりますね。なんかもう、完全に季刊になっちゃっているような気がしますが、ひょっとすると明日にでも新ネタ更新なんて可能性もあったりなかったりw

まぁ、それはそれとして、先日発売されたXBOX360版のShadowrunですが、FPSゲームとしては珍しい「TRPG」をベースとしたゲームとなっています。
そこで、今回のコラムでは「TRPGとはなんぞや」というのをお題にしてみようと考えています。

ちなみに「RPG」という単語自体は、極ありふれていますよね。ゲームに興味のある方は当然のこと、「RPGとはドラクエみたいなゲームのこと」といえば非常に多くの方が理解してくれますね。XBOX360であれば、「eM」「ブルードラゴン」「トラスティベル」などが該当しますね。この「RPG」の前に「T」の文字がついたのが「TRPG」となります。正式な名称としては「テーブルトーク・アールピージー」の略称となります。

日本でRPGといえば、前述のとおりドラクエを代表されるコンピュータゲームという認識が強くなりますが、海外ではコンピュータ向けRPGとTRPGでは完全に別のジャンルとして扱われているのが一般的なようです。というよりもは「海外で単にRPGといったらTRPGのこと」「日本ではTRPGという遊び方が浸透していないので、RPGはコンピュータゲームとして認識されている」といったほうが正しいのかもしれませんね。では、TRPGとは何かといいますと、コンピュータを使わないRPGゲームとなります。

ドラクエのような一般的なコンピュータRPGでは、人間が操作した結果はすべてコンピュータ側で処理が行われます。例えば、NPCに話しかければ決められた回答が返ってきますし、戦闘で敵を殴ればダメージを与えられます。これらの動作がすべてコンピュータ上のプログラムで自動処理が行われています。しかしながら、TRPGではこのプログラムの部分を人間が担当します。このプログラム代わりの人間をGMと言います。各プレイヤーは自分の行動などをGMに申告し、GMはその申告にあわせて処理を進めていく、という流れになります。いわゆる「〜ごっこ」に判定役が存在して、各自が一定のルールにのっとって遊ぶのがTRPGの本質といえるでしょうね。

ここで疑問となるのが「コンピュータが自動で判断処理してくれるのなら、わざわざ人間が判定役をやる必要はないだろう?」という点です。うんうん、まさにそのとおりですね。実際問題としてそういった考え方があるからこそ、コンピュータRPGは存在している訳ですし。ただ、逆説的に言えばこの部分こそがTRPGの真髄となる訳ですね。例えば、コンピュータRPGで遊んでいて「酒場で飲み物を頼む」というシーンになったとします。この場合は「プレイヤーがこういう行動をとったら、こういう結果にする」というのが最初からすべてプログラムで決まっている為、プレイヤー側で選択できる会話内容は極限られてしまいます。その為「このNPCとの会話では、こういう選択をしたいのに、選択肢がない」なんてことが往々としてあると思います。「自由度が高い」ことを売りにしているRPGはありますが、いくら自由度が高いといっても、コンピュータRPGである以上、最初からプログラム上で決められた対処以外は絶対に出来ません。これは(近未来において完全自立型AIでも開発されない限り)普遍的な絶対原則となります。つまり、いくら売り文句で自由度が高いといっても、所詮は決められた選択範囲が広いだけということで、限定された選択肢の中からプレイヤーが選択を行っているに過ぎません。つまり、コンピュータRPGにおいては「完全な自由は存在し得ない」ということになります。

しかしながら、このプログラム部分を人間が担当するTRPGでは、プレイヤーが要求してくるさまざまな事柄を適時対応しながら物語を進行させることが可能です。例えば、前述の例で行くと「酒場で飲み物を頼む」ときに、コンピュータRPGでは、ウイスキーとビールしか選べなかったとします。ゲームの中でこれ以外に選択肢がない以上、どちらかを選ぶしかないのですが、時として限定された選択肢のみではやはり不満が残る場合もありますよね。これが前述の「コンピュータRPGの限界」となるのですが、TRPGではプレイヤー側のほうで「いやいや、俺はコーラが飲みたいんだよ」とGMに要求することができます。それに対してGMの方でプレイヤーの要求に合わせた回答をその場ですることができるのですね。回答例としては「コーラは置いていない」だったり「コーラが飲みたければ他所の店に行け」だったり「コーラが飲みたければ、まず材料をそろえて来い」という感じで、GMのアドリブ次第でいくらでも展開を広げることができます。つまり、GMの存在により、プレイヤーには行動の選択に限界がない、というのがTRPGの最大の魅力でしょうね。

こう書くと、TRPGのほうがRPGよりも楽しめそうな気がするのですが、これがなかなかそうはいかないのが現実です。まず、人と人(GMとプレイヤー)で遊ぶゲームのため、基本的に一人で遊ぶことが出来ません。また、人と人が会話をしてゲームとして成り立たせるという側面を強く持つため、GM自身に高いスキルが要求されます。例えば、前述の「酒場での飲み物を頼む」場合、時代背景が現代〜未来であればコーラは存在してもおかしくないのですが、舞台が中世ヨーロッパであれば、そもそもコーラ自体が存在しませんよね。それに舞台が現代であったとしても、サンプルとしてあげた「コーラの材料をもってこい」なんて回答は、一般常識に当てはめてみれば非常にナンセンスな回答だといえるでしょう。つまりGMはプレイヤーからのどんな要求に対しても適切な対応ができる経験や知識が要求されます。また、GM自身が完全な中立を保つ必要もあります。例えば、戦闘などでも不用意にプレイヤー側を全滅させたりしてはダメですし、かといって何の障害もなく強大な敵を赤子の手をひねるがごとく倒してしまい、巨万の富が手に入れられるというのもプレイヤーからしてみれば刺激がなくてつまらないですよね。言葉は悪いですが「生かさず殺さず」的なバランス感覚を要求される場合もあります。また、このバランス感覚に関してはGMの問題だけではなく、プレイヤーにも要求される内容となります。前述で行くと「中世ヨーロッパでコーラは存在しないので、そもそもキャラクターが頼んだりもしない」という常識をプレイヤーが持ち合わせていなければ、ゲーム自体がが成り立たなくなります。こうなると、プレイヤー自身は、ゲーム内のキャラクターになりきって遊ぶ必要があります。こういったなりきり要素を「ロールプレイ」と表現します(会社の新人研修などでも、業務における対応などの研修の際にこういったロールプレイで訓練を行う会社もありますね)。日本ではドラクエなどのゲームを指し示すRPGは、どちらかといえばレベルアップなどの成長要素がRPGの本質という誤解を生んでいるのが現状ですが、本来の「ロールプレイ」は「なりきりプレイで遊ぶ」という意味合いが強いものだと思うんですよね。TRPGでは「人と人がテーブルを囲んでなりきりプレイで遊ぶ」という意味合いになるものだと感じています。

ちなみに、このTRPGの歴史ですが、1970年代前半にアメリカで考案された比較的新しいジャンルの遊びとなりますね。このTRPGから「戦闘やストーリー展開などのGMが担当する部分をコンピュータで仕込まれたプログラムが解決し、一人で遊ぶことが出来るように」という方向で進化したのが、今のコンピュータRPGであるといえますね。なお、海外では子供向けの遊びとして一定以上の認知されているTRPGではありますが(映画なんかでもTRPGで遊んでいるシーンが出てきたりしますね)、日本ではイマイチ主流に乗ることが出来ず、逆に一人で遊ぶことが出来るコンピュータRPGが主流となったのは、上記にあげたようないろいろな制約が受け入れられなかったという風に捉えてもいいと思いますね。その為、日本においては極一部のファンを除いてはTRPGという遊び方を知らなかったり、聞いたことがあったとしても遊んだことはないとか、遊んでみたことはあってもあまり面白くなかったというケースが多いみたいですね。特に最後の「面白くなかった」系では、「GMもプレイヤーも錬度が低い」状況で遊んでいた可能性がありますね。

なお、この「一人で手軽に遊びたい」という要望は別に日本に限った話ではなく、コンピュータRPGの元祖といえる、ウィザードリー、ウルティマ、ローグといった名作が海外で開発され、まだ高価で誰もが手にすることができなかった当時のパソコンでこれらのゲームを遊ぶのが一つの憧れになっていた時期があります(当時、これらのゲームが遊べるパソコンは非常に高価で、下手をするとクルマが買える位高かったんですね)。ちなみに、ウルティマはドラクエをはじめとする一般的なRPGの祖ともいえるものですし、ウィザードリーは日本国内で独自の進化を遂げて今でも現役のシリーズですし、ローグはトルネコの大冒険や風来のシレンといった形で一つのジャンルをしっかりと確立していますね。これらはすべてTRPGの楽しさを理解しつつも「一人で遊びたい」という要望を体現したものですね。そして時代が変化し、インターネットという媒体を経由したMO/MMORPGといったジャンルでは、そもそも一人で遊ぶためのコンピュータRPGが、再びTRPGの本質となる「人と人が遊ぶためのもの」に徐々に回帰してきたのかもしれませんね。

個人的には、MMORPGのパイオニアであるUltimaOnline(UO)が出た当時「とうとうコンピュータRPGを人と人が遊べるようになる」と非常に興奮した記憶が鮮明に蘇りますね。UOが登場した当時はインターネットが今ほど発達しておらず、いろいろと創意工夫を凝らして遊んだものです。その後時代が流れ、XBOX360に至っては非常に簡単にオンラインでの対戦や協力プレイが楽しめるようになりましたね。UOが登場したのはたった10年ほど前のことなのですが、その間にはたくさんの思い出が詰まっている10年ですね。そして、こう振り返ってみると凄く時代の流れが速い10年間だったな、という深い感慨を覚えます。

ちょっと話がそれましたが、TRPGとはなんぞや、というお話でした。

そうそう、蛇足・・・という訳ではないのですが、XBOX360版ShadowrunはTRPG版Shadowrunをベースにしていますが、XBOX360版自体はTRPGの要素は全く含んでいない単なるFPSゲームです。あくまでもベースがTRPG版Shadowrunですよ、というだけで、全くの別物となります。その為、XOBX360版ShadowrunにTRPGの雰囲気を求めると、ギャフンな結果になりますので、その点はご注意のほどを。


 

 


■■■ P R ■■■